米国産牛肉輸入問題2(やっぱりな)

輸入再開1カ月、またもや米国産牛肉が停まってしまいました。1月20日、米国か
ら輸入された牛肉の中に、除去されるべき特定危険部位の脊柱の混入が確認された
のです。食関連業界にとっては、ホリエモンショック以上の大きな激震が走りまし
た。

「それみたことか」「やっぱり、輸入再開は早過ぎた」という論調一色なので、
ここでは敢えて、別の見方をしてみることにします。そうでないと、自民党の政策
を闇雲に反対する民主党のようになってしまいます。なぜ、こうしたことが起こっ
たのか、起こってしまったことを、今後に生かすことはできないのか----。今こそ、
冷静な検討が必要なのではないでしょうか。

今回の事件が起こった直接の理由は、当該食肉処理場の従業員が日本市場向けの牛の特定棄権部位を除去するというルールを知らなかったこと。おまけに、その作業をチェックするはずの検査官が、施設に常駐しているにもかかわらず、そのルールを把握していなかったことです。では、なぜルールを守れなかったのか。

私はこう推測します。米国は30カ月齢以下の牛は安全と見なし、特定棄権部位の除去作業がありませんので、「自分たちが安心して食べているものだから、大丈夫」「アメリカにやってくる日本人も、美味しそうにアメリカンビーフを食べているではないか」という甘えがあったのではないでしょうか。

とはいえ、1カ月にしてルールが順守できないとあっては、ルールを取り決めた米国政府の、日本に対する面子が丸つぶれです。ですから、ジョハンズ米農務省長官も「非は我々にある。日本との合意に反する受け入れ難い失敗」と、すぐにミスを認めました。しかし、日本は即刻輸入を再停止し、米国に対して今回の協定違反のてん末と再発防止策についての報告を強く求めました。その報告書がないことには、再々開にも至りません。

やっと事業再開できると準備万端だった外食産業などは、今回の件でまた失意に陥ったことは察するに難くありません。ただ、今回の事件で、敢えてよかったと思うことを挙げるとすれば、日本が食の安全に対して求めているレベルや意味が、米国側は身にしみて分かったのではないかということです。食の安全への見解の相違は文化の違いもあり、なかなか理解し合うことは難しいですが、いったん決めたルールを破れば輸出ができなくなる、ビジネスができなくなる、ということは、大変分かりやすく、良い“薬”になったと思います。“薬”であるなら、早いうちに飲んでおいた方が病気の悪化も防げます。1カ月で今回の事件が起こったのは、むしろよかったのかもしれません。

20カ月齢以下の牛についての安全性は、食品安全委員会で既に科学的な議論をし尽くしているので、今後の日本の姿勢としては、米国で輸出プログラムが順守されているか、監視を強めるということでしょう。今回の件も、日本が輸出プログラムを監視していたからこそ、確認できたのです。

ところで、2年間にわたって牛の安全について議論してきたのに、一般消費者はともかく、報道に携わるマスコミが依然不勉強であることに、愕然とします。今日のテレビの報道番組でのこと。ペン米農務省次官が日米事務レベル協議で、「車を運転してスーパーに行き事故に遇う確率の方が、牛肉を食べてBSEにかかるよりも高い。米国はBSE感染牛が2頭なのに、日本は22頭」と発言したことに対して、待ってましたとばかりに反論していました。

「米国は全頭検査をしないから2頭しか見つからない。日本は全頭検査のお陰で22頭も見つかった」とは、私の見解。全頭検査をしていない英国で、18万頭ものBSE感染牛が確認されたことを知らないとは、驚くばかりです。

知らないというだけでなく、間違ったテレビ人の発言が、消費者の食への信頼を徐々損なっていることは確かなようです。