<生命科学>肥満の特効薬!?

シブトラミン+生活改善で1年間に平均12kgの減量に成功――米国の研究


抗肥満薬は、食事療法、運動、行動療法などからなる総合的な生活改善プログラムに加えて使用するよう推奨されている。しかし実際には、生活改善なし、または最低限のみ、という患者にも処方されている。米Pennsylvania大学医学部のThomas A. Wadden氏らは、シブトラミン単独と生活改善単独、そしてそれらを併用した場合の減量における有効性を比較、併用が大きな効果をもたらすことを示した。詳細は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2005年11月17日号に報告された。

米国では現在、シブトラミンとオルリスタットが抗肥満薬として処方されている。シブトラミンは、セロトニンノルアドレナリンの再吸収を阻害する薬剤で、食欲と満腹感を制御する信号伝達を修飾して、摂食量を減らす。

今回の試験の対象となったのは、BMIが30〜45の肥満成人224人(女性180人、男性44人)。全員に摂取熱量を1200〜1500kcal/日にするよう指導。15%を蛋白質で取り、脂質由来の熱量は30%以下に抑えて、残りを糖質で摂取するよう指示した。同時に1日、30分の歩行を奨励した。

被験者たちは無作為に以下の4群に割り付けられた。
シブトラミン単独群(55人):プリマリケア医を計8回受診し(各回10-15分)、処方されるシブトラミンを15mg/日服用。受診の際に減量のための指導は行われなかった。
生活改善単独群(55人):訓練を受けた心理学者が、1回90分のグループ・セッション(7-10人)を18週目まで週1回、それ以降は各週で、計30回実施。指導の一部として、食べた食品、摂取カロリー、運動の内容を記録するよう指示した。
シブトラミン+生活改善群(併用群)(60人):シブトラミン15mg/日とグループ・セッションを併用。
シブトラミン+カウンセリング群(54人):プライマリケア医が受診時に10-15分間の短いカウンセリングを実施し、生活改善指導を行った。被験者たちには、食事と運動の記録が課せられた。

1年後の体重減少は、併用群12.1±9.8kg、シブトラミン単独群では5.0±7.4kg、生活改善単独では6.7±7.9kg、シブトラミン+カウンセリング群では7.5±8.0kg(p<0.001)。いずれのグループでも体重減少は18週まで顕著だった。シブトラミン単独群は、試験期間を通じて体重減少が最も少なかった。生活改善群とシブトラミン+カウンセリング群の体重の変動は、ほぼ同等で同じパターンを示した。

1年後に体重が5%以上減少していた被験者の割合は、併用群73%、シブトラミン単独群42%、生活改善群53%、シブトラミン+カウンセリング群56%(p=0.05)。10%以上減少は、それぞれ、52%、26%、29%、26%だった(p=0.004)。

どのグループでも、記録を頻繁に付けていた人々の方が、減少幅が有意に大きかった。併用群では、被験者を記録の頻度により3分位数で分類すると、1年後の体重減少は、最高3分位18.1±9.8kg、最低3分位7.7±7.5kg(p=0.04)となった。これは、記録することで患者自身による摂食行動の改善が刺激されるためと考えられた。

ベースラインと18週、40週、52週時に、種々の代謝性危険因子を測定したが、いずれについても4群の間に有意差は認められなかった。被験者全員のデータを総合すると、1年後の時点で、トリグリセリド(p=0.003)、グルコース(p<0.001)、インスリンおよびインスリン抵抗性(いずれもp<0.001)が有意に改善されていた。総コレステロール値は低下(P=0.02)、HLD-Cは上昇(p=0.003)していた。これらの変化は体重減少と相関していた。

 脱落者は39人(17%)。グループ間に有意差はなかった。主な理由は、治療に満足できなかった(22人)、スケジュールが合わなかった(5人)、など。シブトラミンに由来すると考えられた副作用は、動悸、顔面の発疹のみだった。

抗肥満薬と生活改善のためのグループ・セッションの併用が、最も大きな効果をもたらた。今回、プライマリケア医によるカウンセリングの併用が、シブトラミン単独より有効であることが示された。これは、臨床医が、減量効果を高めるカウンセリングを提供できる可能性を示す。グループ・セッションに要する時間とコストを考えると、患者にとっては、プライマリケア医による指導の方が好ましいだろう。著者たちは今後、プライマリケアまたは地域社会における生活改善のための指導法を確立する必要があると述べている。 

薬だけじゃなくて、日頃の生活習慣の改善も必要なんですねぇ。。。(  ̄з ̄)