ライブドアとバイオベンチャー

粉飾決算が明るみに出た今となっては幾らでも批判できますが、プロ野球球団の買収やテレビ局買収で話題になっている会社がバイオ投資に関心を示していると聞いたときには、バイオ産業の活性化につながるのであればと少しは期待しました。ですが、その行動を振り返ると、ライブドアはバイオベンチャーマネーゲームのおもちゃにしたとしか言えません。

1つは昨年3月、上場初日に初値がつかないという失態を演じたエフェクター細胞研究所の主幹事を、ライブドアの子会社のライブドア証券が努めたことです。株価はあくまでも株式市場の参加者が決めることなので、高いか安いかを云々する立場ではありませんが、上場時の公募価格は最終的には主幹事証券会社と上場会社が協議の上で、決定されることになっています。主幹事にとっては公募価格が高ければ手数料収入が増えますが、公募価格割れを起こせば株主に損をさせるだけです。したがって、上場後に大幅な公募価格割れを引き起こすような公募価格を決定した責任は、ライブドア証券エフェクター細胞研究所にあると言っていいはずです。

もう1つはトランスジェニックを巡る一件です。昨年11月に、ライブドア証券はトランスジェニックの転換社債型新株予約権付社債MSCB)を引き受けるとともに、トランスジェニックの大株主から借株を実施しました。その後、借りた株を少しずつ売却して株価が下がったところでトランスジェニックとの提携を発表。それに反応して株価が急騰したタイミングで、トランスジェニックの社債を大量に株式に転換して市場で売却し、推定で10億円近い売却益を手にしたもようです。

ライブドアが関係した上場バイオ企業は知る限りこの2社ですが、株価への影響はほぼ全社におよび、16日の終値で678.91だったのが、17日には635.07、18日には581.33まで下落しました。19日にINDEXは610.87まで戻しましたが、20日現時点(13時30分)では全般的に軟調で、ライブドアショックの余波がどこまで広がるかは読めません。

一方で、ライブドア投資ファンドのロングライフバイオファンド投資事業組合を設立するなど、未上場バイオベンチャーへの投資にも積極的な姿勢を見せていました。ライブドア証券のバイオ担当者曰く「バイオに関心があるのは堀江(社長)」とのことで、バイオは言うなれば“社長プロジェクト”だったようです。実際、堀江社長東京大学理化学研究所などを訪問してレクチャーを受けていたそうです。ただ、それも今となっては金儲けに利用できるベンチャーを物色していただけのようにも思えてきますが……。

いずれにせよ、今回の出来事を受けて、投資ファンドの情報開示のあり方や、会計監査のあり方など、さまざまなところで制度の見直しが検討されることでしょう。その結果、投資の世界の透明性が高まるとすれば歓迎すべきことです。ただし、今回の事態で投資マインドが冷え込まないか、少し心配です。特に、上場バイオベンチャーの株価への影響自体は限定的なものにとどまるかもしれませんが、証券取引所ベンチャー企業に対する見方がさらに厳しくなるなどして、上場予備軍のバイオベンチャーの経営に影響が出ないかどうかは、大いに気になるところです。

今回の一件から、バイオベンチャーサイドとしては、資金調達先の選定には慎重を期すべきという教訓を得たといえるでしょう。出資を受けるにも、社債を引き受けてもらうにも、相手によってはマネーゲームに巻き込まれ兼ねないわけです。お金にはやはり、“色”があったということでしょう。

それにしてもひどいよね。。。